ステートメント
墨と和紙を用い抽象絵画やクラフト作品を制作している。
制作において、明確な構想を持たず即興的に描き始めることにより、描画材:墨、支持体:和紙を画家の主導権から解放し、それらの潜在的な可能性を引き出すよう努めている。現れた偶然的な表情から着想を得、それがどのように見えるのか、なぜそのように見えるのか、そういった疑問を絵画の構成要素である、点・線・面の色彩、明度、形態、数、動き、絵の保有する空間、重力、方向的・時間的感覚などと理論的に結びつけながら解釈し作品として展開していく。この過程では、私がこれまで実際に目で見てきたものと頭の中で見てきたそれぞれのイメージの蓄積や知識が、多分に影響しているように思う。例えば、青色は落ち着く、寂しさ、海、点の集合は何かの群れ、雨、水平線のある構図は風景、安定した印象などである。この情報の連携により視覚イメージが何か意味を持つものとして認識される、この行為はその要素に対し必然性を裏付けしている感覚である。私は結果として、子供の頃からの興味である哲学や物理的に存在が無く目が捉えることのできない人の思考や心情の状態、物事の概念を抽象絵画という媒体を通して可視化していると言える。
私の持つ思考の風景を実体化させ、鑑賞者はそれを抽象絵画として実体験する。異なる環境の中で、異なる背景、言語、習慣を持ち、差異のある世の風景を見ているその目が、同じ思考の風景を共有できるとき、鑑賞者はその抽象絵画に対して、作者と近い意味づけをし、似たような必然性を見出しているということだろうか。抽象絵画という定義づけや言語化を明確にできない媒体を通し、他者の思考の風景に接触する体験は、鑑賞者にとって日常生活の中で意識されにくい思考や感覚を認識するように働きかけ、物事や世間に対し少し違った角度から、又距離を持って見るきっかけに繋がればいいと思う。このような体験が、情報が錯綜している印象を持つ現代社会において必要なのではないか、そのような考えを持ち制作している。
技術面について、制作を始め10年ほど経つが、描画材への好奇心、探究心が常に制作の根元にあり、現在は光合成や酸化などの化学反応により独自の技法で墨を生成し、制作に用いている。それは一塊の黒い墨であるが、墨の濃淡、支持体の和紙の厚みにより変わる保水性や乾くまでの時間、和紙そのものを構成する要素、例えば麻、綿、楮、竹、ワラ、木材、古紙等がどのような割合であるかにより、黒色、青色、水色、紫色、赤色、桃色、橙色、黄色等が現れるといったものである。私自身の持つ想像の範囲を超えたイメージを得るために、描画材や支持体をきっかけに偶然的な事象を制作の過程の中で誘発させることが必要で、描画材や支持体については日々研究している。
2021年から絵画制作と並行して、和紙にドローイングしたものに対しプラスティックコーティングを施した素材を用い、栞、ポーチ、コースター等のクラフト作品も制作し新たな作品の可能性を模索している。
制作において、明確な構想を持たず即興的に描き始めることにより、描画材:墨、支持体:和紙を画家の主導権から解放し、それらの潜在的な可能性を引き出すよう努めている。現れた偶然的な表情から着想を得、それがどのように見えるのか、なぜそのように見えるのか、そういった疑問を絵画の構成要素である、点・線・面の色彩、明度、形態、数、動き、絵の保有する空間、重力、方向的・時間的感覚などと理論的に結びつけながら解釈し作品として展開していく。この過程では、私がこれまで実際に目で見てきたものと頭の中で見てきたそれぞれのイメージの蓄積や知識が、多分に影響しているように思う。例えば、青色は落ち着く、寂しさ、海、点の集合は何かの群れ、雨、水平線のある構図は風景、安定した印象などである。この情報の連携により視覚イメージが何か意味を持つものとして認識される、この行為はその要素に対し必然性を裏付けしている感覚である。私は結果として、子供の頃からの興味である哲学や物理的に存在が無く目が捉えることのできない人の思考や心情の状態、物事の概念を抽象絵画という媒体を通して可視化していると言える。
私の持つ思考の風景を実体化させ、鑑賞者はそれを抽象絵画として実体験する。異なる環境の中で、異なる背景、言語、習慣を持ち、差異のある世の風景を見ているその目が、同じ思考の風景を共有できるとき、鑑賞者はその抽象絵画に対して、作者と近い意味づけをし、似たような必然性を見出しているということだろうか。抽象絵画という定義づけや言語化を明確にできない媒体を通し、他者の思考の風景に接触する体験は、鑑賞者にとって日常生活の中で意識されにくい思考や感覚を認識するように働きかけ、物事や世間に対し少し違った角度から、又距離を持って見るきっかけに繋がればいいと思う。このような体験が、情報が錯綜している印象を持つ現代社会において必要なのではないか、そのような考えを持ち制作している。
技術面について、制作を始め10年ほど経つが、描画材への好奇心、探究心が常に制作の根元にあり、現在は光合成や酸化などの化学反応により独自の技法で墨を生成し、制作に用いている。それは一塊の黒い墨であるが、墨の濃淡、支持体の和紙の厚みにより変わる保水性や乾くまでの時間、和紙そのものを構成する要素、例えば麻、綿、楮、竹、ワラ、木材、古紙等がどのような割合であるかにより、黒色、青色、水色、紫色、赤色、桃色、橙色、黄色等が現れるといったものである。私自身の持つ想像の範囲を超えたイメージを得るために、描画材や支持体をきっかけに偶然的な事象を制作の過程の中で誘発させることが必要で、描画材や支持体については日々研究している。
2021年から絵画制作と並行して、和紙にドローイングしたものに対しプラスティックコーティングを施した素材を用い、栞、ポーチ、コースター等のクラフト作品も制作し新たな作品の可能性を模索している。